心理発達コラム
小学校低学年の登校渋り(行き渋り)とは?原因・対応・改善策を徹底解説
「朝になると泣き出してしまう」「校門で固まってしまう」——そんな登校前の不安や戸惑いに、戸惑っている保護者の方も多いのではないでしょうか。
小学校低学年の登校渋り(行き渋り)は、環境の変化や自立へのステップが影響しやすい時期に起こりやすく、適切な対応によって改善が期待できます。
本記事では、登校渋りのサインや原因、家庭で実践できる対応策を段階的に解説し、安心してお子さまを支えるためのヒントをお届けします。
1. 登校渋り(行き渋り)の定義とよくあるケース
1-1. 登校渋り(行き渋り)の定義
登校渋りとは、子どもが身体的には健康で登校が可能にもかかわらず、強い不安や拒否感から学校に行きたがらない状態を指します。
特に小学校低学年では、まだ自分の気持ちをうまく言葉にできないため、泣いたり固まったりする形でサインが出ることが多いです。
1-2. よくあるケース
登校渋りのサインは、日常の中でさまざまな形で現れます。以下は特に多く見られるケースです。
朝、泣きながら「行きたくない」と訴える:親から離れることへの不安感
校門や教室前で立ち止まって動かなくなる:新しい環境に緊張している
「お腹が痛い」「幼稚園に戻りたい」と言う:体調不良や過去の安心感を理由に行きたくない気持ちを表現
2. 登校渋り(行き渋り)が増える時期と特徴
2-1. 入学直後・進級後
新しい友だちや担任教師、教室環境に慣れるまでの間は、不安や緊張が強くなりがちです。特に入学後すぐは分離不安が顕著になることも。
登校前に涙が出る、腹痛を訴える
校門で足が止まる
教室に入りたがらない
2-2. 授業形態の変化
集団活動や給食、係活動など、新たなルールや役割に対する不安が強まることがあります。急な予定変更も苦手な傾向があります。
給食や音楽、体育の時間に不安が強まる
朝から緊張している様子がある
「今日は何があるの?」と何度も確認する
2-3. 長期休み明け
リラックスした家庭での生活から一転して、規律ある学校生活に戻ることへのストレスが影響します。甘えたい気持ちも強くなる時期です。
「ママと一緒にいたい」と言う
朝起きるのを嫌がる
食欲が落ちる、元気がない
3. 登校渋り(行き渋り)の主な原因と家庭でできる対応策
3-1. 分離不安
「ママと離れるのがさみしい…」そんな気持ちが強く出るのが分離不安です。無理に離そうとすると逆効果になることもあります。
最初は保護者と一緒に登校して、徐々に一人での登校に慣れていく
ご褒美シールや「がんばりカード」を活用して登校の達成感を感じさせる
お別れの合図をあらかじめ決めて、安心できる儀式にする
3-2. 学校生活への不慣れ
トイレや給食、係活動など、学校生活のルールにまだ慣れていないことで不安が高まります。
家庭で給食の配膳やトイレの手順を練習しておく
「困ったときはどうするか」を事前に子どもと話し合っておく
学校訪問で実際の環境を一緒に確認する
3-3. 友だち関係の不安
まだ「友だちをつくる」「遊びに誘う」といった社会的スキルが育っていない時期には、不安や孤立感を抱えやすくなります。
近所の同級生と遊ぶ機会をつくり、顔見知りを増やす
家庭で「誘い方」や「断り方」をロールプレイで練習する
担任に相談し、席の配置やグループ活動で配慮してもらう
3-4. 教師との距離感
担任の先生が怖く感じたり、距離が近すぎたりすることで、教室に入りにくくなることもあります。
笑顔であいさつする練習を親子でしておく
保護者面談で子どもの性格や不安を共有しておく
他の先生(保健室、通級など)とも関わる場を増やす
3-5. 自己肯定感の低さ
新しい環境で「できなかった」経験が重なると、自信をなくして「行きたくない」と思うようになります。
家庭でできたことを具体的に褒め、小さな成功体験を積み重ねる
1日の頑張りを記録する「がんばりノート」やシール帳を作る
得意なことや好きなことを活かせる時間を意識して作る
3-6. 複合型要因
分離不安や給食の不安、友人関係のストレスなど、複数の要因が絡んでいる場合は、1つずつ丁寧に整理しながら対処していくことが重要です。
「どんな時に行きたくなくなる?」を一緒にリスト化する
不安に順位をつけて、対策を1つずつ試してみる
担任やスクールカウンセラーに相談してサポート体制を整える
3-7. 家庭環境の影響
保護者の不安や兄弟姉妹との関係が、子どもの登校渋りに影響を与えることもあります。
保護者自身も相談機関や身近な人に不安を打ち明ける
兄弟姉妹との時間のバランスを見直し、それぞれの子に安心感を持たせる
必要に応じて福祉的支援やヘルパー制度を活用する
4. 登校渋り(行き渋り)の改善事例
ケース1:入学直後の分離不安を乗り越えたAちゃん
入学後まもなく、毎朝「行きたくない」と泣いていたAちゃん。最初の1週間はお母さんと一緒に登校し、教室前でお別れ。担任や保健室の先生が毎日笑顔で出迎え、徐々に安心できるように。
登校中も先生と過ごす時間を確保
家でも「がんばりシール帳」で達成感を記録
1か月後には友だちと登校できるように
ケース2:複合的な不安を抱えたBくんの変化
2年生に進級したBくんは、新しいクラスで担任が男性になり、仲の良い友達とも離れてしまい、登校を嫌がるように。
去年の担任から今の先生の良いところを紹介してもらう
好きなこと(恐竜の話)を通じて担任と関係づくり
クラスの席も安心できるメンバーの近くにしてもらい、1週間後には登校再開
このように、具体的な行動や支援が重なることで、子どもは少しずつ学校に慣れていくことができます。次章では、早期にできる対応やサインの見分け方を紹介します。
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5. 深刻化前にできる早期対応
5-1. 見逃したくない早期サインと対応
「なんとなく元気がない」「朝になると不機嫌になる」など、登校渋りのサインはさりげない形で現れることもあります。
登校前のぐずり、体調不良の訴え、夜更かしや寝つきの悪化
ゲームや動画視聴で現実逃避をする傾向
「今日は行きたくない」と言ったとき、叱らずに理由を聞く
小さな変化にも気づき、声かけやスキンシップを増やして安心感を与えましょう。
5-2. 学校・専門機関との連携のしかた
家庭だけで抱え込まず、学校や専門機関と早めに情報共有・相談することが改善の第一歩です。
担任との連絡帳で日々の様子を簡潔に共有
スクールカウンセラーへの相談で客観的な視点を得る
地域の子育て支援センターや教育センターを活用し、継続的な見守り体制をつくる
登校渋りは、家庭と学校、地域が連携して取り組むことで改善の可能性が高まります。次章では、親自身ができる工夫や関わり方についてご紹介します。
6. 登校渋り(行き渋り)と向き合う親の工夫
6-1. 保護者自身のメンタルヘルスと安心感の確保
まじめで責任感の強い保護者ほど、「自分の対応が悪かったのかも」と悩みがちです。でも、親が安心していることが、子どもにとっても一番の安心材料になります。
「登校できない=悪いこと」ではなく、「今はそういう時期」と受け止める
心配や戸惑いを家族や友人、支援機関に話して共有する
無理に登校させるよりも、子どものペースに寄り添う選択を
6-2. 子どもの自己肯定感を育む接し方と生活の整え方
登校できてもできなくても、わが子は大切な存在。そのメッセージを日々の関わりの中で伝えることが、自己肯定感の土台になります。
「おはよう」「おやすみ」などの日常の声かけを丁寧に
スキンシップ(ハグ、手をつなぐ)やアイコンタクトを意識的に
決まった時間に起きる・寝る、少し体を動かすなど生活リズムを整えておく
「今日の楽しかったこと」を一緒に振り返る時間をつくる
まとめ
登校渋り(行き渋り)は、子どもなりの「今の環境にうまくなじめない」というサインです。大切なのは、親子で一緒に悩み、少しずつ前に進むこと。焦らず、比べず、お子さんのペースを尊重しながら、必要な時には学校や支援機関に頼りましょう。
筆者:子どもの心と発達の相談ルーム「ここケット」代表:大畑豊(臨床心理士・公認心理師)
スクールカウンセラー・保育園・大学講師などもしています。
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