心理発達コラム

癇癪、反応の薄さ…幼児〜小学校低学年の子どもとどう向き合う?親子関係のヒント

「子どもがかわいいと思えない…」
そんなふうに感じてしまうとき、心のどこかで「こんな気持ち、親として失格なのでは」と自分を責めてしまう方も多いのではないでしょうか。

特に、幼児期〜小学校低学年の子どもは、癇癪を起こしたり、親の愛情に反応が薄かったりと、関わり方に悩みやすい時期です。
毎日一生懸命子どもに向き合っているのに、うまくいかない——そんな苦しさをひとりで抱え込まないでください。

このブログでは、子どもの発達や心の動きをふまえながら、親子関係を“ちょうどよく”整えていくヒントを、年齢や特性に合わせてお伝えします。

1. 幼児期〜小学校低学年:「感情をことばにできない」子どもとのつながり方

1-1 小さな子どもは、感情をうまく言葉にできない

幼児期から小学校低学年くらいまでの子どもたちは、自分の気持ちをうまく言葉にすることがまだ難しい時期です。
悲しい、さみしい、くやしい――そんな感情があっても、それを言葉で説明する代わりに、癇癪やすねる、泣き叫ぶといった行動で表現されることが多くあります。

これは、子どもの発達段階において自然なことです。親としては「何がそんなに気に入らなかったの?」「どうして怒るの?」と戸惑いますが、まだ“感情を整理して伝える力”が育っていないということを知っているだけでも、少し受け止め方が変わってきます。

1-2 親の愛情が伝わらないように感じるとき

「こんなに愛情をかけているのに、なぜ受け取ってくれないのだろう」
そう感じて、虚しさや悲しさを抱える保護者の方も少なくありません。特に、子どもが無反応だったり、笑ってくれなかったりすると、まるで気持ちが届いていないようでつらくなることがあります。

ですが、子どもが愛情を受け取っていないのではなく、“その場で反応する力”がまだ育っていないだけのことも多いのです。
たとえば、膝に乗ってこなくなった、お礼を言ってくれない、楽しそうにしてくれない——それでも、親の温かいまなざしやふれあいは、確実に子どもの中に積み重なっています

そして、ある日ふとした瞬間に「ありがとう」「一緒がいい」といった言葉で返ってくることもあります。

2. 「わかってくれない」と感じるすれ違いの中で

2-1 「話を聞いてくれない」と感じる親子

子どもに「こっち向いて」「片づけなさい」と声をかけても、まるで聞いていないかのような態度。
何度言っても反応がなく、親の声が虚空に吸い込まれていくような気持ちになることはありませんか?

この時期の子どもは、まだ「自分のしたいこと」に気持ちが強く引っ張られる特性があります。
親の言葉が聞こえていないわけではなく、“聞いて理解して行動にうつす”という一連のプロセスが発達途上なのです。

また、興味の対象がどんどん広がるこの年齢では、「注意が持続しない」「何を優先すべきか判断できない」といった脳の発達に起因する行動も見られます。

だからこそ、まずは「この子は悪気があって無視しているのではないかもしれない」と思ってみることが、親子の関係性を壊さない第一歩になります。

2-2 感情の波とすれ違い

小さな子どもは、自分の気持ちに巻き込まれやすく、気分によって行動が左右されがちです。
さっきまで笑っていたのに急に怒り出す、甘えていたかと思えば突然拒否する――そんな“気持ちの波”が日常に溢れています

こうした行動には、“ことばにならないしんどさ”が隠れていることがあります。

発達心理学では、子どもが感情を言葉にする能力(情動の言語化)は、5〜6歳ごろからゆっくりと育つとされており(Denham et al., 2011)、この力は個人差も大きいものです。特に、疲労や不安が強いときには、感情の表現がいっそう難しくなる傾向があります。

さらに、「レストレインメント・コラプス(抑制疲労)」という現象では、子どもが日中ずっと自己抑制して頑張っているため、帰宅後に一気に反応が爆発するという心理的メカニズムが注目されています。(いわゆる“emotional breakdown after school”)。

このように、感情の抑圧と疲れは、言葉の表現力をさえぎり、行動として爆発的に現れることがあるのです。

また、個々の子どもには感覚過敏やこだわりの強さといった発達特性があり、音・光・人間関係などの刺激が慢性的なストレス源となっているケースもあります。
そんなとき、親がただ「話しなさい」と促すと、子どもはさらに緊張し、心を閉ざしてしまうかもしれません。

3. 愛情を見せても、こたえてくれないように感じるとき

3-1 反応が薄くても、子どもはちゃんと感じている

「好きなものを作ってあげたのに喜んでくれない」
「ぎゅっと抱きしめても無表情のまま」
こうした場面が続くと、親としては「愛情が伝わっていないのでは」と不安になり、「私の気持ちは届いていないのかも」と虚しさを感じてしまうことがあります。

しかし、子どもが“親の愛情に反応しない”ように見えても、それを感じ取っていないわけではありません。
特に、幼児〜小学校低学年の子どもは、そのときの気分や身体状態に大きく左右されるため、喜びや感謝の気持ちがあっても、それを言葉や表情で表現できないことも多いのです。

発達特性のあるお子さんでは、感情の外在化(表に出すこと)そのものが苦手なこともあります。
だからこそ、そのときの反応だけを見て「伝わっていない」と判断しないことがとても大切です。
静かに座っているときでも、「一緒にいられて安心している」ことがあるのです。

3-2 距離を置かれるときの「見守り方」

ときに子どもが「来ないで」「さわらないで」と、親を拒絶するような言動を見せることがあります。
こうした反応にショックを受け、「もう好かれていないのかも」と落ち込む親御さんも多いのですが、これもまた子どもが“自分の安心できる距離”を探している過程かもしれません。

親としては「それでも愛しているよ」という気持ちを伝え続けることが大切です。
たとえば、部屋に入っていかなくても「ここにいるよ」と声をかけたり、目線を合わせたりするだけでも、子どもは安心感を感じ取っています。

そして何より、子どもが自分のタイミングで戻ってくるのを、信じて待つ姿勢が、信頼関係の土台を作っていきます。

4. 日常のふれあいが関係を育てる:やってみたい5つの工夫

4-1 特別なイベントではなく、日々の共同行動を大切に

親子関係をよくしたいと思ったとき、「どこかに出かけよう」「思い出を作ろう」とイベントを企画する方も多いでしょう。
もちろんそれも素敵なことですが、親子の信頼関係を育む一番の近道は、もっと身近な“日常のふれあい”にあります。

たとえば、こんなことが子どもにとって安心につながります。

  • 一緒にごはんを作る(材料を切る、混ぜるなど簡単な役割を)

  • お気に入りのテレビや動画を一緒に見る

  • 寝る前に同じ本を読む

  • なんとなく同じ空間にいて、それぞれ好きなことをしている

  • 「おいしいね」「あったかいね」など、ちょっとした共感のことばを交わす

発達心理学や家族研究の領域では、親子が日常的に“共同行動”(食事・家事・遊びなど)を経験することが、子どもの信頼感や情緒的な安定を育む要因になるとされています。

たとえば、家族で一緒に食事をとる経験が、子どもの心理的適応や親子の結びつきに良い影響を与えることは、多くの研究で示されています(Fiese et al., 2002Eisenberg et al., 1998)。
さらに、親子の“シンクロニー”(同調性)や共感性が、子どもの社会性や情緒の発達に影響することも、Feldman(2007)の研究から明らかになっています。

こうした研究は、「そばにいる」「同じ時間を過ごす」といった非言語的なふれあいが、ことば以上に親子の関係性を育てる可能性を裏付けてくれます。

4-2 「そばにいるよ」を伝えるふれあいの力

言葉で「愛している」と伝えるのももちろん大切ですが、子どもは言葉よりも“ふれあい”から愛情を感じ取ることが多いです。
特にまだ感情を言語化する力が弱い年齢では、そっと手をつなぐ、背中に触れるといった身体的なふれあいが、何よりの安心材料になります。

たとえ癇癪の後でも、「怒っていたけど、やっぱりお母さんの手はあったかい」と感じられるだけで、親子の“つながり直し”がはじまることもあります。

また、子どもが求めている愛情のかたちは、一人ひとり異なるという視点も大切です。
一般的な育児書に書かれている方法がその子に合っているとは限らないし、あなた自身の子どもの頃の感覚とも違うかもしれません。

「いまは反応がないけど、いつかきっと返ってくる」
そう思えるような愛情の注ぎ方が、親にとっても心を守る支えになります。

5. “ちょうどいい距離感”ってなに?子どもと向き合うときのヒント

5-1 「もっと頑張らなきゃ」と思いすぎないで

子どもとしっかり向き合いたい――その思いから、「もっと関わらなきゃ」「親として頑張らないと」と自分を追い込んでしまう方は少なくありません。
でも、子どもとの関係で大切なのは、「べったり」でも「放っておく」でもない、“ちょうどいい距離感”です。

特に、幼児〜小学校低学年の子どもは、「自分でやりたい」気持ちと「助けてほしい」気持ちの両方を行き来する発達段階にあります。
先回りしすぎると不満になり、放任しすぎると不安になる――そんな繊細なバランスの中で育っているのです。

5-2 距離感を見極める3つのヒント

  • 「手を出す前に、ひと呼吸おく」
    まずは子どもの様子を観察し、助けが必要か見極めましょう。

  • 「助ける理由をことばにする」
    「心配だからやってあげたくなっちゃうんだ」と素直に伝えると、子どもは理解しやすくなります。

  • 「子どもの気持ちに寄り添う質問」
    「やってみたい気持ちと、ちょっとこわい気持ち、両方あるのかな?」と声をかけてみると、子ども自身の気持ちに気づくきっかけになります。

5-3 関係性の“質”を育てるふれあいとは

発達心理学や家族研究の領域では、親子が日常的に“共同行動”(食事・家事・遊びなど)を経験することが、子どもの信頼感や情緒的な安定を育む要因になるとされています。
たとえば、家族で一緒に食事をとる経験が、心理的適応や親子の絆に良い影響を与えることは多くの研究で示唆されています(Fiese et al., 2006Eisenberg et al., 2010)。
さらに、親子の“シンクロニー(同調性)”が子どもの発達に重要であるという視点も、Feldman, 2007 によって裏付けられています。

「となりでごはんを作る」「いっしょに洗濯物をたたむ」「隣の席で絵を描く」――
そうした何気ない時間の積み重ねこそが、関係性の“質”を育てていく土台なのです。

6. 「疲れてしまった自分」を責めないで:親のしんどさとの向き合い方

6-1 「かわいいと思えない」気持ちは、あなただけではありません

「言うことを聞いてくれない」「すぐに癇癪を起こす」「反応がなくて、かわいいと思えない」――
そう感じてしまう自分を、「親失格なのでは」と責めてしまう方がいます。

でも、それは“あなたの心が限界を越えかけている”サインかもしれません。

親も人間です。
仕事・家事・育児と慌ただしい毎日のなかで、自分の感情を抑え続けることは、強いストレスにつながります。
ましてや子どもとのやり取りに悩みがあるときほど、「ちゃんとしなきゃ」と力が入りすぎてしまい、心が疲れてしまうのです。

6-2 「親自身のゆとり」が、親子関係の回復のカギ

子どもに優しくしたいのに、怒ってしまう。
「わかってあげたい」と思うのに、かえって突き放してしまう――
そうした“矛盾した関わり方”の背景には、親自身が余裕を失っている状態があります。

家族心理学の研究では、親の「ワークライフバランス満足度」と「ストレス反応」が、子どもとの関係に影響することが示されています(たとえば、福岡県立大学の研究・2023)。
また、親の心の状態は、言葉や態度を通して、子どもにそのまま伝わるとされており、「子どもにとって安全な場所」になるためには、まず親自身が“安定していられること”が大切なのです。

6-3 グレートマザー・コンプレックスから自由になる

「母親なら、無条件に子どもを愛せて当然」
「子どもが第一、私は後回し」
そんな“理想の母親像”にしばられていませんか?

これは心理学の世界では「グレートマザー・コンプレックス」と呼ばれ、“こうあるべき”という理想に縛られて、自分を苦しめてしまう状態を指します。
本当は疲れているのに、がまんして笑ってしまう。
助けてほしいのに、「私は大丈夫」と言ってしまう――
そんなふうに、「がんばる母親像」から一歩離れてみることも、自分を守る大切なステップです。

親として、完璧である必要はありません。
「ちょっとしんどい」「今日は無理かも」とつぶやくことも、立派な自己ケアです。
その姿を見て、子どもも「感情を大切にしていいんだ」と学んでいくのです。

7. 今はうまくいかなくても、“より良くしていける関係”がある

7-1 「わかってくれる人がいる」という実感が支えになる

子育ての中で、「こんなに頑張っているのに、伝わらない」「どう接していいか分からない」と感じることがあります。
子どもが癇癪を起こす、言うことを聞いてくれない、反応が薄くて愛情を持てない――
そんなふうに親自身がつらさを抱えているとき、「この関係はもうダメかもしれない」と思ってしまうこともあるでしょう。

でも、どんな親子関係にも、“より良くしていける可能性”があります。

親子の関係は、「完璧な信頼」ではなく、「揺れながらつながり続けること」が本質です。
そして、“わかろうとしてくれる人がいる”という実感が、子どもにとっても、親自身にとっても、大きな支えになるのです。

7-2 関係を“より良く”していく、ささやかな一歩

子どもとの関係をよくしたいと思ったとき、必要なのは大きな変化ではありません。
「おかえり」と声をかける、「寒くない?」と気遣う、そっと手をつなぐ――
そんな日常のなかのふれあいが、じわじわと信頼の糸を紡いでいきます。

子どもが拒否的な態度をとっていても、その裏には「本当は分かってほしい」「受け止めてほしい」という気持ちが隠れていることがあります。
そして、いまは反応がなくても、いつかふとした瞬間に、その愛情が返ってくることもあるのです。

7-3 あなたの“愛し方”を、あなたのままで

子どもが何を望んでいるのか、どんな愛情を求めているのか――
それは、マニュアルや育児書だけでは分かりません。
親も子も一人ひとり違っていいのです。

だからこそ、「私がどう関わりたいのか」「どんな関係を築きたいのか」を、あなた自身の言葉で見つけていくことが大切です。
完璧じゃなくても、表現が下手でも、あなたの“愛し方”が、子どもにとってかけがえのない支えになります。

 

筆者:子どもの心と発達の相談ルーム「ここケット」代表:大畑豊(臨床心理士・公認心理師)

スクールカウンセラー・保育園・大学講師などもしています。

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