心理発達コラム
「学校に行きたくない」高学年の行き渋り・不登校。臨床心理士による原因と対応策

「明日は学校に行く」と言っていたのに、朝になると布団から出られない、あるいはお腹が痛いと訴える……。小学校高学年のお子さんが突然「学校に行きたくない」と行き渋りを見せ始めたとき、親御さんとしては「どうして?」「無理にでも行かせるべき?」と、正解がわからず深く悩まれることと思います。
この記事では、日々多くのご相談に乗っている臨床心理士(公認心理師)が、高学年特有の不登校・行き渋りの「本当の原因」と、ご家庭ですぐに実践できる「正しい初期対応」について解説します。
「うちの育て方が間違っていたのかな…」とご自身を責める必要はありません。焦らず、お子さんの心のSOSに寄り添いながら、一緒に解決への糸口を見つけていきましょう。
1 「明日は行く」と言ったのに…。高学年の行き渋り・不登校の本当の原因
1-1 思春期特有の「自分でも理由がわからない」心のモヤモヤ
1-2 友人関係の変化や学習のプレッシャーによる自信喪失
2 不登校を長引かせないために。親が気づきたい「心のSOS(サイン)」
2-1 朝の腹痛や頭痛は、仮病ではなく心からのサイン
2-2 「その違和感、正しいかも」会話が減るなど、日常の小さな変化チェックリスト
3 【初期対応】子どもを追い詰めない、臨床心理士が勧める3つのステップ
3-1 ステップ① まずは「休んでいいよ」の一言で心のエネルギーを充電する
3-2 ステップ② 「なぜ?」と原因を問い詰めず、絶対的な味方になる
3-3 ステップ③ 家庭を一番安心できる「安全基地」として再構築する
4 やってはいけない!行き渋りを悪化させてしまう親のNG行動
4-1 「無理やり学校へ連れて行く」が逆効果になる理由
4-2 腫れ物に触るような対応が、かえって子どもの罪悪感を育てる
5 焦らなくても大丈夫。行き渋りが長引く「停滞期」の過ごし方と事例
5-1 すぐには解決しなくて当然。少しずつ前進したAくん(5年生)の事例
5-2 親の対応は「100点」じゃなくていい。自分を責めないためのマインドセット
6 学校以外にも道はある。高学年の子に合った支援と専門機関との連携
6-1 「あれ?学校はわかってくれないの?」と諦める前に。先生やカウンセラーとの連携を模索して
6-2 一人で抱え込まず、専門の相談機関(ここケット)を頼る
7 まとめ:焦らず、少しずつ。お子さんとご家族に合ったペースを見つけましょう
1. 「明日は行く」と言ったのに…。高学年の行き渋り・不登校の本当の原因

前日の夜は「明日は学校に行く」とランドセルを準備していたのに、朝になると「やっぱり行けない」と布団から出てこない…。そんな姿を見ると、親御さんとしては「なぜ?」「どうして?」と理由を問いただしたくなるかもしれません。
しかし、小学校高学年(4〜6年生)の行き渋りにおいて、明確な一つの「原因」があるケースはむしろ稀です。いくつかの要因が複雑に絡み合っていることがほとんどです。
1-1. 思春期特有の「自分でも理由がわからない」心のモヤモヤ
小学校高学年は、思春期の入り口に差し掛かり、心と体が大きく変化する時期です。ホルモンバランスの影響などもあり、これまで平気だったことに対して急に不安を感じやすくなります。
お子さん自身も「なぜ行きたくないのか」が言葉にできず、「なんとなく行きたくない」「理由はわからないけど、とにかくイヤ」という漠然としたモヤモヤを抱えていることがよくあります。この時期に「理由を言いなさい」と問い詰めることは、お子さんをさらに追い詰めてしまうため注意が必要です。
1-2. 友人関係の変化や学習のプレッシャーによる自信喪失
高学年になると、クラス内のグループ化が進み、友人関係がより複雑になります。「仲のいい友達とクラスが離れた」「些細な言葉の行き違いで居心地が悪くなった」といった対人関係の悩みが引き金になることも少なくありません。
また、学習内容が急激に難しくなる時期でもあります。授業についていけない不安や、テストや行事で「失敗したらどうしよう」というプレッシャーから自信を失い、学校という場所そのものが「安心できない場所(=ストレス)」に変わってしまうケースもあります。
💡 あわせて読みたい:高学年の親子関係について
お子さんが急にそっけなくなったり、何を考えているかわからなくなったりして戸惑っている親御さんは、こちらのコラムもぜひ参考にしてみてください。
👉 「なんでそんな態度…?」に悩むあなたへ。小学校中学年〜高学年の親子関係ヒント集
👉 思春期は五里霧中?中高生の親子関係を再構築するためのヒント
2. 不登校を長引かせないために。親が気づきたい「心のSOS(サイン)」
行き渋りは、ある日突然始まるように見えて、実はその前から小さな「サイン」が出ていることが多くあります。このサインに早く気づき、適切に対応することが、不登校の長期化を防ぐ第一歩となります。
2-1. 朝の腹痛や頭痛は、仮病ではなく心からのサイン
「朝になるとお腹が痛いと言うのに、休むと決まると日中は元気にゲームをしている」。この姿を見ると、つい「仮病じゃないの?」と疑いたくなるかもしれません。
しかし、決して仮病ではありません。言葉でうまく表現できない強い不安やストレスが、自律神経の乱れを引き起こし、実際に「腹痛」や「頭痛」といった身体症状として表れているのです。まずは「痛いんだね、しんどいね」と、その辛さをそのまま受け止めてあげることが大切です。
2-2. 「その違和感、正しいかも」会話が減るなど、日常の小さな変化チェックリスト
「担任の先生からは『学校では普通ですよ。元気ですよ』と言われるんですが…」 これは、行き渋りのご相談で親御さんから非常によくお聞きする言葉です。学校で気を張って「普通」を頑張りすぎている分、安心できるご家庭でだけSOS(疲れやエネルギー切れ)を出している状態なのです。
だからこそ、「最近、なんとなく元気がない?」「いつもと少し違う…」という、親御さんがふと感じる違和感は正しいことが多いのです。一番近くでお子さんを見ているからこそ気づける、日常の小さな変化のチェックリストをまとめました。
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朝起きるのが極端に遅くなった、または夜眠れなくなった
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学校の話題になると表情が曇る、口数が減る
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帰宅後、イライラしたり、無気力な様子が目立つ
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ゲームや動画に過度に没頭し、現実逃避しているように見える
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「先生が怖い」「〇〇さんと会いたくない」とポロリとこぼす
これらのサインが複数当てはまる場合、お子さんの心はエネルギー不足に陥っている可能性があります。
💡 あわせて読みたい:学校と家庭での姿の違いについて
「学校では元気ですよ」という先生の言葉と、家でのぐったりした様子のギャップに悩むのは珍しいことではありません。
子どもの見せる姿の違いについては、こちらのコラムでも解説しています。
👉 教育現場を知っていること
3. 【初期対応】子どもを追い詰めない、臨床心理士が勧める3つのステップ

行き渋りが始まった時、親御さんの最初の対応がその後の回復スピードを大きく左右します。焦る気持ちをグッとこらえ、まずは以下の3つのステップを意識してみてください。
3-1. ステップ① まずは「休んでいいよ」の一言で心のエネルギーを充電する
子どもにとって「学校を休む」ことは、親が想像する以上に勇気と罪悪感を伴います。「行かなきゃいけないのに、行けない自分はダメだ」と自分を責めている状態です。 まずは親御さんから「しんどいなら、今日は休んでいいよ」と声をかけてあげてください。この一言で、張り詰めていた心の糸がふっと緩み、すり減った心のエネルギーを充電するスタートラインに立つことができます。
3-2. ステップ② 「なぜ?」と原因を問い詰めず、絶対的な味方になる
「どうして行きたくないの?」「何かあったの?」と聞きたくなるのが親心ですが、高学年の場合、子ども自身も理由がわからず混乱していることが多いです。 問い詰めるのではなく、「どんなあなたでも大好きだよ」「何があってもお母さん(お父さん)はあなたの味方だよ」という姿勢を伝えてください。理由を言えなくても受け入れてもらえる経験が、自己肯定感の回復に繋がります。
3-3. ステップ③ 家庭を一番安心できる「安全基地」として再構築する
外の世界(学校)で気を張り、傷ついた心を癒やす場所がご家庭です。特別なことをする必要はありません。好きなご飯を作る、一緒にテレビを見て笑う、温かいお風呂に入るなど、日常の安心感を大切にしてください。 家庭が完全にリラックスできる「安全基地」として機能し始めると、子どもは自然と再び外の世界へ向かうエネルギーを蓄えていきます。
💡 あわせて読みたい:子どもが動き出す「タイミング」について
お子さんが自分の殻から出て、再び外へ向かうエネルギーを蓄えるには、親御さんが「待つ」タイミングも重要になります。ひな鳥の孵化に例えたこちらのコラムもご覧ください。
👉 殻を割らないこころのタイミング
👉 【🔵 不登校ケアプログラムを見る】
👉 目次に戻る。
4. やってはいけない!行き渋りを悪化させてしまう親のNG行動
良かれと思ってやったことが、かえってお子さんを追い詰めてしまうケースもあります。ここでは、特に避けたい2つのNG行動を解説します。
4-1.「無理やり学校へ連れて行く」が逆効果になる理由
泣いて嫌がる子どもを車に乗せたり、校門まで引っ張っていったりする行為は、「親は自分の気持ちを分かってくれない」という絶望感を与え、親子の信頼関係を深く傷つけます。 一時的に登校できたとしても、根本的なエネルギー不足は解消されていないため、すぐにまた行けなくなり、結果的に不登校を長期化させる最大の原因になりかねません。
4-2. 腫れ物に触るような対応が、かえって子どもの罪悪感を育てる
無理やり行かせるのがダメだからといって、極端に気を遣いすぎるのも考えものです。親がビクビクして「腫れ物」のように扱うと、子どもは敏感にそれを察知し、「自分のせいで親を悲しませている」とさらに強い罪悪感を抱いてしまいます。 学校の話題を不自然に避けるのではなく、あくまで「普段通り」の温かくフラットな態度で接することが重要です。
5. 焦らなくても大丈夫。行き渋りが長引く「停滞期」の過ごし方と事例

初期対応としてお子さんを休ませ、少し元気になってきたように見えても、「じゃあ明日は行けるかな」と期待するとまた行けなくなる。こうした一進一退の「停滞期」は、親御さんにとって一番もどかしく、辛い時期かもしれません。しかし、心の回復は右肩上がりではなく、波があって当然なのです。
5-1. すぐには解決しなくて当然。少しずつ前進したAくん(5年生)の事例
登校できそうで、できない。続きそうで、続かない。学校に入ってしまえば元気なのに、そこまでがなかなか進まない……ということがあります。
しかし、そうした一進一退の時期を焦らずに過ごしていくことから、良い方向へ向かうケースはたくさんあります。友人関係の不安から行き渋りが始まったAくん(5年生)の、リアルな道のりをご紹介します。
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初期:休ませると元気に過ごし、翌日は登校できる日もありましたが、徐々に休む日が多くなっていきました。
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1ヶ月目:夜になると「明日は行く」と言い、朝には「3時間目から行く…」と本人は頑張ろうとするものの、結局行けない日が続きます。親御さんはその状況に一喜一憂し、葛藤しながらも「行こうとした気持ちだけでもすごいよ」と声をかけ続けました。
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3ヶ月目:焦らず見守る中で少しずつ心のエネルギーが溜まり、放課後に学校へ行ったり、保健室になら登校できたりする日が出てきました。
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半年後:担任の先生の配慮で気の合うお友達と同じ班にしてもらい、「遠足」という行事がきっかけとなって、ようやくクラスで過ごせるようになりました。
このように、親御さんの葛藤を伴いながら半年以上かけて少しずつ前進していくのが、現場でのリアルな道のりです。「何ヶ月も経つのにまだ教室に行けない」と焦る必要はありません。三歩進んで二歩下がるペースこそが、お子さんの心が着実に回復している証拠なのです。
5-2. 親の対応は「100点」じゃなくていい。自分を責めないためのマインドセット
「あの時つい怒ってしまった」「私の育て方が悪かったのかも」と、ご自身を責めてしまう親御さんは本当に多いです。ですが、親も人間です。余裕がない時にイライラしてしまったり、つい正論をぶつけてしまったりするのは当たり前のことです。
親の対応は「100点満点」である必要はありません。もし感情的に怒ってしまったら、「さっきは言いすぎちゃった、ごめんね」と後から素直に伝えられれば、それで十分なのです。親御さん自身が完璧を求めず、肩の力を抜くことが、結果的にお子さんの安心感へと繋がっていきます。
💡 あわせて読みたい:子育ての正解探しに疲れてしまったら
子育てには「絶対うまくいく法則」はありません。地図のない道を迷いながら歩いて、少し疲れてしまった親御さんは、
こちらのコラムを読んで肩の力を抜いてみてくださいね。
👉 いっしょに歩こう 少しのこころのささえ
👉 【🔵 不登校ケアプログラムを見る】
👉 目次に戻る。
6. 学校以外にも道はある。高学年の子に合った支援と専門機関との連携

ご家庭だけで行き渋り・不登校を抱え込むには限界があります。第三者の専門的な視点や、新しい居場所の選択肢を持つことで、親御さん自身の心の負担も大きく軽くなります。
6-1. 「あれ?学校はわかってくれないの?」と諦める前に。先生やカウンセラーとの連携を模索して
行き渋りが始まると、外で頑張りすぎるお子さんほど、学校と家庭での姿に大きなギャップが生まれます。先生からは「学校では元気ですよ」と言われても焦る必要はありません。学校と家庭で状況が違うことは、実は非常によくあることなのです。
ここで「どうして分かってくれないの」と諦めたり対立したりするのではなく、「家ではこんな様子なんです」とお互いの見えている姿をすり合わせながら、連携を模索していくことが不可欠です。
相談相手は担任の先生に限りません。教頭先生や校長先生、あるいはスクールカウンセラーなど、まずは「一番話しやすい先生」に声をかけるところからで大丈夫です。保護者の方自身が、お子さんのことを安心して話せる相手を学校内に見つけ、一緒に子どもを支えるための連携を模索していきましょう。
6-2. 一人で抱え込まず、専門の相談機関(ここケット)を頼る
「学校には少し相談しづらい」「もっと専門的なアドバイスが欲しい」という場合は、地域の教育センターや、民間の心理相談ルームを頼るのも一つの有効な手段です。
当相談ルーム「ここケット」でも、日々多くの不登校や行き渋りのご相談をお受けしています。「子どもが何を考えているかわからない」「親としてどう接すればいいか迷っている」といった悩みをお話しいただくだけでも、思考が整理され、次の一歩が見えてくることがたくさんあります。
お子さんにとって学校以外の「安心できる居場所」にもなり得ます。一人で抱え込まず、どうか専門家の力を頼ってください。焦らず、少しずつ、ご家族に合ったペースを一緒に探していきましょう。
💡 あわせて読みたい:家庭でも学校でもない「第三の場所」
学校でもなく、塾でもない。お子さんがホッとできる「程よい距離感の場所」の重要性について、ここケットの想いを綴っています。
👉 塾でもない学校でもない 程よい距離感の場所に
👉 不登校相談は民間もあり?学校でも病院でもない第三の選択肢
👉 【🔵 不登校ケアプログラムを見る】
👉 目次に戻る。
7 まとめ:焦らず、少しずつ。お子さんとご家族に合ったペースを見つけましょう
小学校高学年の行き渋り・不登校は、思春期特有の心の揺らぎや、対人関係、学習のプレッシャーなど、さまざまな要因が複雑に絡み合って生じる「心のSOS」です。
「明日は行くと言ったのに…」と一喜一憂してしまう毎日の中で、親御さんご自身も心身ともに深く疲弊されていることと思います。しかし、お子さんが学校に行けないのは、決してご家庭の育て方が間違っているからではありません。
まずは「休んでいいよ」と声をかけ、すり減った心のエネルギーを充電する時間を大切にしてください。一進一退のもどかしい時期や、苦しい時期(停滞期)は必ずありますが、焦らず、100点満点を求めず、少しずつお子さんに合った環境を整えていくことが、解決への一番の近道になります。
一人で抱え込まず、専門家(ここケット)にご相談ください
親御さんが「これからどう接すればいいかわからない」「学校の先生とうまく連携できない」と行き詰まりを感じた時は、どうかご家庭だけで抱え込まず、専門家の力を頼ってください。
大阪天王寺区にある子どもの心と発達の相談ルーム「ここケット」では、臨床心理士・公認心理師であり、スクールカウンセラーとしても現場に立つ専門家が、お子さんの心理状態の見立てと、ご家庭での具体的な関わり方を一緒に考えます。
「とりあえず親の悩みだけを聞いてほしい」というご相談でも全く構いません。保護者の方の心が少しでも軽くなることが、お子さんの安心感に直結します。
焦らず、少しずつ。ご家族が笑顔になれるペースを、一緒に探していきましょう。
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